はじめに

日本が高齢社会となる一方,情報機器の操作は複雑化しています.たとえば,テレビ放送のデジタル化に伴いリモコン操作も煩雑となり,高齢者には扱いにくいものとなっています.このような状況から「ユニバーサルデザイン(UD)」の重要性が高まりつつあり,その言葉も広く知られるようになってきました.UDといえば,シャンプーの凸記号やテレホンカードの切り欠きが有名ですが,このような製品のデザインだけでなく,使い勝手の良いシステムを工学的に設計するうえで,UDの考え方は重要になります.例えば高齢者が使いやすい機器の研究開発には,高齢者の心理,特性を知ってそれに配慮することが大切であり,家電機器や住宅設備メーカにおいても,UDが積極的に研究されています.本部会では,誰でもが使いやすいシステムを開発する上で,UDに配慮したシステムの設計手法や評価方法の確立を目指し,システムを俯瞰的に見るシステムインテグレーションの概念をベースに研究を進めます.

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UD とは,ノースカロライナ州立大学ユニバーサルデザイ ンセンターの Ronald L. Mace 氏が提唱した概念で,「あらゆる体格,年齢,障害の有無にかかわらず,誰でもが利用できる製品・環境を創造する」というものです.そして,以下のような 7 つの原則を提示しています.

原則1 公平な使用への配慮

原則2 使用における柔軟性の確保

原則3 簡単で明解な使用法の追求

原則4 あらゆる感覚による情報への配慮

原則5 事故防止と誤動作への受容

原則6 身体的負担の軽減

原則7 使いやすい使用空間と条件の確保